『みなさん、屋根の雪・・・きちんと考えた家造りされていますか?(その1)』
皆さん、こんにちは。平成の時代が終わり、いよいよ令和時代がスタートしましたね。平成の時代は、経済的な不安定や災害が多く、国難とも言える時代でした。令和は、そんな事が少ない明るい時代になって欲しいです。
さて今回は、『屋根の雪の処理』について考えたいと思います。
5月に入って各地で真夏日を記録し始めているこの時期に、『屋根の雪??』と皆さんには笑われてしまうかもしれませんね。しかし、つい先日この話題を考えさせられる出来事がありました。
先週の日曜日、高田地区の昭和町で地鎮祭がありました。そこは、3区画のミニ団地で、当社の建物以外の2棟はかなり工事が進んでいました。1棟は地元のビルダーさん、もう1棟は全国展開規模のビルダーさん。
仕事柄、色々な建物を見ることが好きなので2棟の違いを見ていたり、当社が建設予定の図面を見て配置の確認をしていました。その時、ふと気付いたことがありました。
当然、街中の団地ですから、土地の広さ(特にお互いの境界からの距離)は余裕はありません。各々、境界から1m程度はスペースを取って家が建っています。境界から家の離れは、民法上では50cm以上と決まっていますが、各地の慣習も考慮されますので、上越では1m以上は、境界から家を離すことが理想です。
ちなみに、地区計画というローカルルールがある場所では、境界から1.5m以上はなさなくてはいけない・・・といった特殊なエリアもありますので、土地を買う際は確認してくださいね。
さて、お話しを戻して、3区画のうち2棟はかなり出来上がっていたので何気なく見ていたら、屋根の形状と向きがまるで違うことに気付きました。
■地元のビルダーさんの家の屋根 → 狭い境界側ではなく、広い自分の敷地内に向けて造られている。
雪止め材も、屋根にまんべんなく設置されている。
■全国展開規模のビルダーさんの家の屋根 → 狭い境界側(お隣の家側)に向けて造られている。
雪止め材は、屋根の先端部分(屋根の1/3)位しか設置していない。
ここまで読んで頂いて、何となく気付いて頂けたと思うのですが、お隣の家の境界側に屋根が向いているのです。私は豪雪時代の上越地域をよく知っているので、『屋根の雪下ろしが必要になったら、どうするんだろう???』・・と心配になりました。
どんなにご近所の仲が良くても、他人の屋根の雪を自分の敷地に落とされたら、怒らない方はいないと思います。
確かに、ここ数年は大雪ではなかったので、雪の心配を忘れがちです。しかしながら、ここ上越は日本有数の豪雪地帯。しかも日本海特有の湿った重い雪であることを忘れてはいけません。仲町の一斉除雪が行われるような年は、街中でも屋根の雪下ろしが必要になるかもしれません。
その時、気をつけなければいけないのは、『余所様の敷地に、自分の家の屋根の雪を落としてはいけない』・・・という大前提です。何故ならば、雪のトラブルの責任は、その家の所有者の責任だからです。
では、どの様なことに気をつけて、家造りの計画をしたら良いのでしょうか?
(1)記録的な大雪の時に、屋根の雪をどう処理するか検討する。
①融雪屋根方式・・・・灯油や電気を用いた装置で、屋根の上で雪を溶かす方法。
➁自然落雪方式・・・・屋根の傾斜を急勾配にして、積もりかけた雪を自然に落下させる方法。
③耐雪型屋根方式・・・一定量の雪を屋根の上で耐えさせる方法。
①融雪屋根方式
現在は、燃料や電気代が高騰しているので、融雪屋根方式は敬遠される方向にあります。私どもの本社の一部も灯油での融雪屋根なのですが、灯油代も高騰しているため、もったいないので手作業で雪下ろしをしています(笑)
➁自然落雪方式
自然落雪方式は、落雪する場所のスペースが十分確保しておかないとお隣に雪が入ってしまい、これもトラブルになります。屋根の傾斜角度にもよりますが、皆さんが想像している以上に遠くに飛んで落下するイメージでいてください。十日町市のホームページには雪が飛ぶ距離の算定式もありますので、参考にして下さい。
また落雪して溜まるスピードは、皆さんの想像よりとても早く溜まります。そして落雪した雪は、固く溶けにくいので、落雪して溜まった雪を手作業で処理することは困難です。落雪して雪が溜まっても、問題ないスペース、雪で外壁や窓が傷まない対策(高基礎など)が必要になります。街中の住宅地では、あまりお勧めできません。
③耐雪型屋根方式
となると、比較的土地の大きさの制限が少なく、ランニングコストのことも考えると、耐雪型屋根方式が最も利用しやすい屋根方式だと思います。ただし、この方式にもデメリットがありますので、十分に吟味した計画をしないといけません。
次回からは、耐雪型屋根方式の家造りを前提として、お話しの続きをしたいと思います。自分でも書きながら思ったのですが、『雪の対策を考えた屋根』も、ずいぶん奥が深そうですね。
それでは、また次回お会いしましょう!